ミャンマー金融政策の枠組み

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2013年ミャンマー中央銀行法の成立

2013年7月、ミャンマー中央銀行(CBM)は、財務省から分離され、一定の独立性を持った中央銀行となりました。CBM法では、CBMの目的として以下を上げています。

  • 国内の価格安定性を確保し維持すること(第5条)
  • 金融/通貨の安定性を促進すること(第6条a項)
  • 金融システムの安定性を高めること(第6条b項)
  • 効率的な支払・決済システムを発展させること(第6条c項)
  • 政府が実施する持続的な経済発展に向けた経済政策を支援すること(第6条d項)

金融政策の枠組み

2012年以来、CBMは”Manetary Targeting Policy Framework”を導入しており、それには以下が含まれます。

  • 最終的な目標:通貨・価格の安定性
  • 中間目標:マネーサプライ(マネーストック)
  • 操作目標:マネタリーベース
  • 金融政策手段:公開市場操作、Discount Window

CBMが能動的に取り得る金融政策の手段としては、現状、以下の枠組みがあります。

  • 中央銀行金利(これを基準に市中銀行の預金金利の下限と貸出金利の上限を設定)
  • 預金準備比率
  • Discount Window Facilities
  • 政府証券オークション
  • 預金、貸出オークション
  • 外国為替オークション

ミャンマーは2011年の民政移管以降、IMFの技術支援を受けながら、上記の通り、少しずつ近代的な金融政策の手段を手に入れています。

しかしながら、https://www.imf.org/external/region/tlm/rr/pdf/Dec06.pdfでCBMが自らも述べているように、当初及び今でも大きな問題になっているのが、短期・中期の流動性の状況を如何に正確に知った上で、機動的な金融政策を実行できるか、という点です。

例えば、短期的な流動性管理としては、政府や民間の給料日、年金の支払日がいつなのか、それにより銀行側の流動性がどの程度影響を受けるのかということです。また、中期的な流動性管理としては、輸出が多くなる季節や、農家において種まき肥料が必要になる季節など季節的に、銀行側の流動性がどの程度影響を受けるかです。長期的には、預金量がどのように増えていっているのかも重要です。

こういった状況を見ながら、民間で資金がひっ迫しているならば、例えば貸出オークション。資金が余っているならば、例えば預金オークションにより、流動性を調整するということが必要になります。

金融政策の課題(IMF2019の指摘)

以下では、現状入手できる中で最も的を射た分析と思われるIMF(2019)を要約する形で、金融政策の課題を列挙します。

第一、現状、無担保銀行間貸出は一定程度行われているが、そのデータが適切に金融政策に活用されていない。CBMは銀行間金利の情報をホームページで公表しているが(月次ベースで、取引高と金利を公表)、タイムリーでない。また、銀行からの報告が信頼できるものではない。現状、以下のようなデータがホームページで更新されています。

(Source) Central Bank of Myanmar, extracted in 5th Jun 2020

第二、市中データを精査するとともに、市中銀行に重要な点に関するヒアリングを行い、中銀として金融分析能力を高めるべき。

第三、レポ取引や国債市場の発展向けて、CBMは2017年12月に、レポ取引に関する通達を発出しているが、その後、数件の取引しかない。国営銀行は余剰資金を持っているので、レポ参加者として有望であるが現状、積極的に参加していない。

第四、外国銀行は国債を保有しておらず、したがってレポ取引にも参加できない。これは、現状、外国銀行はチャット預金に対する付利が禁止されており、十分なチャット預金を集めることができないこと、そして、ミャンマー国債の格付けが低い(又はない)ため。

第五、国債が電子化されたこと、オークションとなったことから、これまで国債を保有してきていた伝統的な機関投資家:宗教法人などが国債取引に参加しなくなっている。

第六、準備預金比率規制について、必要準備の計算を行う時点と、実際に準備預金を積んでおかなければならない期間の間に3か月という長いギャップがある。

第七、オーバーナイト貸出制度があるが、国債担保が必要で、かつ、CBMへの当座預金残高がマイナスになった場合にしか使うことができず、使われていない。

第八、Discount Window Facilitiesは、”最後の貸し手”としか機能しておらず、金融政策の手段として使える状態でない。また、国債担保が必要で、外国銀行は国債を持っていないので使うことができない。

以上が上記報告書の主なポイントですが、流動性管理の観点から以下の点も大きな課題と言えるものと思います。

つまり、政府や国際機関に関連する支出のタイミングやその他の市中の資金過不足を合理的に推定する能力がまだまだ足りていないという点です。政府関連の財政支出はCBMではなく、ほとんど国営ミャンマー経済銀行を通じて行われていることや、CBMは国内に三つの店舗しかなく、市中銀行自体が完全にシステム化していないことから、正確な情報をタイムリーに入手することが難しいといった状況があります。

  • IMF (2019) “TECHNICAL ASSISTANCE REPORT—MONETARY OPERATIONS”, Jun Iwasaki (IMF Capacity Development Office in Thailand), March 2019.
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